一般社団法人新潟県建築士事務所協会
一般社団法人新潟県建築士事務所協会

建築作品

 優れた建築作品を設計した新潟県内の建築士事務所を表彰することにより、建築士事務所の資質の向上に寄与することを目的としております。

令和4年度 第31回「建築作品・新潟県賞」

講 評

審査委員長 新潟大学名誉教授  
西 村 伸 也

 「建築作品・新潟県賞」は、優れた建築作品を設計した新潟県内の建築士事務所を表彰することにより、建築士事務所の資質の向上に寄与することを目的としています。今年度は、31回目の「建築作品・新潟県賞」の審査となりました。続いているコロナ感染の困難な状況もあって、住宅部門1件、一般建築部門1件、都市部門2件、公共建築部門1件の合計5件の応募作品にとどまりました。
 審査は、令和5年1月19日午後1時半から、西村伸也(新潟大学名誉教授)・地濃茂雄(新潟工科大学名誉教授)・本間裕之(一般社団法人新潟県建築士事務所協会会長)・渡辺文司(一般社団法人新潟県建築士事務所協会 業務・技術委員長)の4名の審査委員で行われました。応募作品に対して、審査委員全員で図面と写真を含む応募書類を精読した上で、各自がそれぞれの作品に30点を上限とした評価点をつけて、各応募作品の特徴と評価するポイントを慎重に議論した上で賞を決定しました。本年度は、応募数は少なかったですが、建築デザインとして高い質の作品が集まり、コンセプトと建築のかたち・景観や周辺環境との関係・建築のデザイン・構造形式・平面構成、計画・材料・ディテール等に至る多くのポイントが議論されて、作品が選ばれました。本年度は、合計が80点を超える上位3点の応募作品を選定し、最上位の作品を最優秀賞とすることになりました。
 最優秀賞は、「YNS/山五十嵐こども園」(株)東海林健建築設計事務所、優秀賞に選ばれた作品は、「~風景を編む~夕凪の唄」(株)高田建築事務所、「ミライコンパス」(株)高田建築事務所です。
 今回選定されなかった応募作品は、町家を丁寧な耐震改修でよみがえらせたもの、コートタウンを新しい領域の考え方でデザインしたもの等、どれも僅差の中で残念ながら選外となったもので、新潟県の設計事務所がもつ建築への思いと力とがますます高くなっていることを実感させられました。今後とも、新潟県建築士事務所協会の方々が、新潟の豊かさを建築として実現できる創造的な設計をすすめてくださることを期待します。
 さらに今年の日事連建築賞へ推薦する作品は、一般建築部門(面積が1,000㎡を超え20,000㎡以下)に「YNS/山五十嵐こども園」(株)東海林健建築設計事務所、小規模建築部門(1,000㎡以下:戸建住宅を含む)には、「~風景を編む~夕凪の唄」(株)高田建築事務所 となりました。
 以下に、受賞された建築作品への講評を記します。

最優秀賞 YNS/山五十嵐こども園 株式会社 東海林健建築設計事務所
優秀賞 ~風景を編む~夕凪の唄 株式会社 高田建築事務所
優秀賞 ミライコンパス 株式会社 高田建築事務所

建築作品講評

最優秀賞

YNS/山五十嵐こども園

株式会社 東海林健建築設計事務所

 木のトラス組み合わせ大空間の屋根を構成し、こども園の各部屋を一体に包み込む。そのトラスの頂点が、各室に含まれるようにデザインされることで、空間の多様な表情も創り出されている。土地の歴史と特徴から導き出したタバコの乾燥小屋とはさき木並木が、木のトラス屋根の中に織り込まれていて、こども園が村の一部として同化する秀逸な景観が立ち現れている。家具や壁が屋根のうねりから離れて、置かれている佇まいも、空間の広がりとゆっくりとした時間の流れを感じさせる。ワークショップによって、こども園と村との関係、空間機能とデザインの検討を行った、丁寧な設計プロセスも見事である。極めて優れた作品であると、評価者全員が一致して高く評価した。

優秀賞

~風景を編む~夕凪の唄

株式会社 高田建築事務所

 新潟市の松美台から日本海を望む北西傾斜の敷地に、風景を眺める場を創ることを基軸にデザインされている。2階を生活の中心として、周辺の建物の間を縫って日本海への落日へ向かうことができる夕凪テラスは、床の段差を下げながら気持ちのよいリビングへとなだらかにつづいている。ダイニングに置かれた展望ベンチ、一階にある通り土間も魅力的な空間である。風景を通して、家族の生活が町へつながっていくことを周到に計画した空間デザインであると高く評価された。

優秀賞

ミライコンパス

株式会社 高田建築事務所

 伝統的建造物が並ぶ摂田屋の一角に建てられた店舗である。コンパスの形をしたスリーヒンジの木構造フレームが、2間の間隔で並べられることで、大きな空間秩序が立ち現れている。店舗のファサードは、このフレームが建築から離れて立ち、特徴的な表情を創りだしている。さらにフレームの間を木のデザインでつなげていった内部は、空間の暖かさとともに創造的な力の心地よさを伝えてくれており、構造フレームが建築空間に融合したデザインとして高く評価された。